2012年4月11日水曜日

それは、どうも私が人でありながら人では無い、そんな夢。
私は、私が知る上で当たり前の『人間』という形をしていて、それだと云うのに他の連中ときたら、目がひとつ、それもとびきり大きなものが付いているだけで、手のひらには良く回る口が付いている、そんな『人間』。気持ちが悪い。長い爪が、綺麗に整えられた髪型が、それでも友人を彷彿とさせ、日に焼けた色黒の肌が、話す声が、それでも会社の上司を彷彿とさせた。気持ちが悪い。

「なんなのだね君は。」

それは私が聞きたい言葉だというのに、それらの『人間』に、そう問われるとまるで自分が異質の様な気がして、やけに恥ずかしくなり、そして恐怖を覚えた。
それは自分という存在を不確かに想っての恐怖だった。

「なんなのでしょう、わたしは。」

そう言えば、手のひらが笑う。至る場所で、手のひらを皆がわたしへ向け、笑う。
それがわたしを囲い、その声はわたしの心を閉じ込めるのにそう時間をかけなかった。
がしゃん、がしゃん。
内側から、厳重に、何度もカギをかける音がした。

わたしはそうして知ったのだ、人と違う事の、恐怖を。
そうなることでしか気付かなかったのだ。『違う』ということ、を。
そして、自分を、気持ち悪いと感じることで、皆と同じ心を共有し、少しでも自分を慰めるのだった。


(次回の作品展で展示しようと考えている小説。
自分が見た夢をいじくってみた。そんな作品ばかり。)